安掛さんのこと。
もう十数年も前のことかしら、ゴールデン街で偶然遭って朝まで呑んだ様な事が、何度もあった気がするのだけれど、何も話していたものやら・・・。もう絶対にカナワナイ感じのコワモテであるし、当時の実験的展示についても、ボクはあまりピンと来ていなかったのだが、いつしか、(まあ、これは言葉で書いても仕方無いのだけれど)街中に人が居る風な妙な写真を発表し続けていて、画面の調子は明らかに暗室で同じカットを何十枚も粘って焼いた時期を持つ人からしか出てこない発想で、でもコレ、意外にデジタルできちんとやってる人は少ないように思えるが、まあコンピューターを触われない自分には羨ましいような、それと同時に、どこまでもヤレてしまうという地獄を思うと、気の毒なような。夏には新写真集が出るそうなので愉しみです。
千先さんのこと。
店を始める前、高田馬場のバー「26日の月」時代から呑み仲間の一人です。意外にも、どこかウマが合うところがあるらしい・・・。今回もカウンターでボソボソ話ていた話題が、いつの間にやら、突然、具体化実現。革トランクに二箱分のネガをかきわけて千先さんの探したコマを、広瀬が暗室に持ち込みます。ボクとしては、結局、自分の写真に成ってしまう、というか、挙句はそんな事にしか成れないような気がして仕方が無いのですが・・・。
打ち合わせにかこつけて、ぼんやり杯を重ねるうちに、どうしてだか、話は大岡昇平の「花影」に及んでいて、六月末、千先さんはネガ数本と布装丁の古本一冊を僕に手渡して、バルセロナへ旅立ちました。